寿司が好きです。日本にうまれて、やっぱり良かったって心の底から思えることのひとつです。
様々な種類のネタを用意していただいて、そこからただただ好きなものだけを好きなだけいただけるなんて、なんて寛容で自由な料理なんだって思います。目の前に置かれたネタに相対した時、そこには哲学さえ感じてしまいます。

かっぱ巻き、当初はきゅうり巻き。数ある寿司ネタにあって出し抜けに異色じゃありませんか。ことのほか好きで、まずはかっぱ巻きから注文します。よくたまご焼きでその店の力量を推し量るのだとか言いますが、正直よくわかりません。ですが、かっぱ巻きの良し悪しは結構わかります。
終戦後、ネタの調達に苦心した早稲田にある八幡寿司の大将が、破れかぶれで巻いてみたのが起源なんだそうです。その後、各地に広がって定番のネタになっていきました。
学生時代この店の前をよく通っていました。環状4号線の一部として整備される以前の西早稲田交差点。大きく曲がる早稲田通りにグランド坂通り、大学西門に至る路地、そして茶屋町通りが交わる複雑な交差点でした。


ここの角に大学いもの店があったと記憶してます。おばちゃんが一人で切り盛りしている小さなお店でした。今となっては、八幡寿司との位置関係も屋号もわかりません。とても安いので幾度か買いましたが、包んでくれる紙にべったりくっついて難儀しました。でも、今でも私にとって大学いもと言えばこの店です。

大学いもの起源は、関東大震災後。東京大学赤門前の三河屋、神田古書店街の一角、早稲田の茶屋町通りにあった店、諸説あるようです。ただ、蒸したさつまいもを揚げて、砂糖と胡麻でトッピング、日本の各地にあったに違いありません。食糧難のなか安く供されたので、貧しい大学生のあいだで評判になり、いつしか大学いもと名づけられたというのが腑に落ちます。
「集まり参じて 人は変われど 仰ぐは同じき理想の光 いざ声そろへて 空もとどろに」。3番の歌詞が好きです。
集う人々とそれを受け入れる人々、お互いの知恵と工夫が歴史に残る文化を培うわけですね。
