高校に進学した祝いとして父から譲り受けた時計、ロレックスのパーペチュアル・デイト・ジャスト。のちに知ることになる真の理由は、単に新しい時計を買ったので要らなくなったからでした。ともあれ、形見には違いないです。
ようやく自分の稼ぎもでき、丸の内のロレックス正規店にて、オーバーホールをしてもらうことにしました。なんだか、やっと自分の所有物だという実感が湧いてきたのを覚えています。

それから何年か経ち、経年劣化が進んだのでしょう。ある日、ロレックスの特徴の一つでもあるステンレス・メタルのベルトが切れてしまいました。ことが起きた場所は、イタリアのヴェネツィア。長距離列車を降り、駅前に広がるその景色に感動した瞬間にポロっ。
帰国後、再びロレックス正規店を訪れました。ところが修理は断られ、高額な新しいベルトを購入するよう、あまりにも簡単になんの忖度もなく勧められました。因みにオーバーホールに約6万円。
なんなんでしょう。高額のプチ・クラシック・ロレックスですよ。少しは、持ち主の由緒・歴史や背景を想像するくらいの配慮があっていいんじゃありませんこと?わざわざ正規店まで足を運び、ひょっとしたら直してくれるんじゃないかなって期待していたんですよ。それを、「あっ、直せませんね。新しいベルトをお求めください」って。
そういえば、丸の内にあった「ロレックスサービスセンター東京」は、2023 年 6 月 30 日に閉店、現在は、空きテナントになっていました。

已む無く安っぽい革のベルトに替えました。
数年間耐えましたが、いつしか腕に巻くことも減り、ついには引き出しの奥へ。こんなことがあったにもかかわらず、後にも先にも一度として時計を買ったことがありません。
そして、この時計は世に出てからおよそ半世紀が経過しました。
生活の一大変化があり、それに伴う整理整頓時にこの時計を目にして、やはり元々の姿にしたいと望みました。そこで出会ったのが「オロロジャイロ」。見積もりをしていただき、状態をお伝えしました。ホームページにて知識と技術を、メールのやり取りにて誠実で迅速丁寧なご対応を確信し、依頼することにしました。オーバーホール込みだと5万5千円(税込)とのことです。

ベルトの復元に特別な加工(彫金職人による部品作成と溶接)がなされたため、修理に要する時間がかかりました。完璧な仕上がりに、たいへん満足しています。
半世紀以上もの時間、変わらない満足感と安心感、優越感をもたらしてくれる優れたテクノロジーとこだわりの意匠。これからも大切にしていきます。