人付き合いが苦手な同士って逆説的ではあるけど、ある瞬間惹かれあうのかも知れません。


大学に入学した最初の語学クラスで、もじゃもじゃ頭の女の子のように華奢でくりっとした目をした奴と隣同士になりました。
それから卒業するまで、かなりの時間をともにしました。某新聞社の入社試験も一緒に二次試験で不合格となりました。


目が合うと子犬のように笑って近づいてくるのに、クールな奴。親の車を乗り回してるくせに、人の運転にケチをつけてくる奴。どんな時でも付き合いは決して断らないのに、やたら成績の良い奴。結構な時間無言だったのに、急に甘えてくる奴。しなくちゃならないことがたくさんあるのに、私の実家に飯を食いにくる奴。極度の人見知りのくせに、急に大陸横断一人旅しちゃう奴。

そんなあいつが、卒業して3年、突然自ら世を去った。

日輪寺の本堂。右に将門公の石塔婆。

浅草にある日輪寺があいつの菩提寺です。
立派な高層ホテル、老舗の料理店、ハムの工場、妖しいホテルなども軒を連ねる町にあります。規模もそれほど大きくはなく、華美でもなく、かといって地味でもありません。そんなわけで、あいつが亡くなって数年間は気にも留めてなかったのですが、日輪寺はかなり由緒あるお寺だったんです。

将門公の首塚が千代田区大手町にあるのは有名です。そこに元々あったのが神田神社(神田明神)とこの日輪寺。創建は9世紀とも。それぞれ移転したあとも、この両寺社では将門公に因む行事が執り行われています。


美しく整えられた首塚の中心には大きな板石塔婆(板碑)があります。そのオリジナルとなった板石塔婆が今も日輪寺の境内におかれています。将門公供養のために“蓮阿弥陀仏”という法号を与え、徳治元年(1307年)にその法号の直筆を石塔婆に刻ませたとあります。

実は、あまり褒められたことではないのですが、あいつの命日には寺務所で買った線香とともに、あいつがいつも吸っていたセブンスターを供えるのを常としています。


何年か前の命日、既に線香とセブンスターが供えられていました。フィルターには口紅。
あいつが吸っていた煙草の銘柄を知る謎の女性。人付き合いの苦手な方なのかも知れませんが、いつかお会いして、あいつのことを語り合える日が来たら、きっと。

投稿者

carrera

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)